前歯がうまく噛み合わない、食べ物が前からこぼれてしまう、口が閉じにくい──。
そんな日常の小さな不便を感じながらも、「自分の癖なのかも」「仕方ないことなのかな」と思っていませんか?
実はそれらの症状は、開咬(オープンバイト)と呼ばれる噛み合わせのズレが関係している場合があります。
開咬とは、奥歯を噛み合わせたときに前歯の上下がきちんと閉じず、すき間ができてしまう状態のことです。
見た目の問題だけでなく、噛む、話すといった口の機能にも影響することがあり、放っておくと顎関節や歯への負担が大きくなることもあります。
ここでは、開咬の原因やマウスピース矯正で治せる範囲、治療の流れや費用について詳しく解説します。
開咬(オープンバイト)とは?

開咬とは、奥歯を噛み合わせた状態でも前歯が閉じず、上下の歯の間にすき間ができる状態をいいます。
見た目では軽い症状に見えても、実際には咬合のバランスが崩れており、発音や食事、顎関節に影響することもあります。
症状の特徴
・前歯で食べ物を噛み切れない
・発音が不明瞭になる(特に「サ行」「タ行」)
・口呼吸や舌の位置異常が起きやすい
・下顎が前に出て見えることも
・前歯の隙間が目立つ
開咬の主な原因
開咬は、歯の位置だけでなく、舌、唇、骨格、生活習慣など、複数の要因が重なって起こることが多い噛み合わせの異常です。
特に幼少期からの癖や呼吸習慣が深く関係しており、自然に治ることは少ないため、原因を正確に見極めた上での治療が大切です。
舌癖(舌突出癖)
原因の一つとしてよく挙げられるのが舌癖です。
本来、飲み込むときの舌は上顎の前方に軽く当たり、前歯を押さえない位置にあるのが正常です。しかし、舌を前方へ押し出して飲み込む癖があると、上下の前歯に常に力がかかり、時間をかけて歯が前へ押し出されてしまいます。
この状態が続くと、上下の歯がかみ合わず、前歯の間にすき間ができてしまうのです。
舌突出癖は乳幼児期から始まることが多く、発音や食事の際の舌の使い方の癖として無意識に続いてしまうことがあります。特に「サ行」「タ行」などの発音時に舌が前歯の間から出る方は、舌癖がある可能性があります。
こうした癖を放置すると、矯正治療で歯を動かしても再び開咬が戻ってしまうことがあるため、舌の正しい使い方を身につけることが重要です。
口呼吸や指しゃぶり
口呼吸の習慣があると、舌が低い位置に下がってしまい、上顎の発達が妨げられます。結果として、上顎歯列が横に狭くなり、上下の前歯が十分にかみ合わないまま開いた状態になることがあります。
また、常に口を開けて呼吸していると唇の筋肉が弱くなり、歯を内側から支える力と外側から押さえる力のバランスが崩れてしまいます。
さらに、指しゃぶりやおしゃぶりの長期使用も、歯を前方に押し出す原因の一つです。特に乳歯列期や混合歯列期に指しゃぶりを続けると、上前歯が前に傾き、下の前歯が後ろへ押し込まれる形で開咬が進行します。
このような癖がある場合は、歯列矯正だけでなく、生活習慣の見直しや呼吸訓練も必要になります。
遺伝、骨格性要因
親から受け継いだ骨格や顎の成長パターンも、開咬の大きな要因です。
上顎や下顎が縦方向に長く発達している場合、前歯の高さが合わずに口が開いたような状態になりやすくなります。
また、骨格性の開咬は、横顔の印象にも影響します。下顎がやや後退して見えたり、口が常に半開きに見えたりするため、見た目のコンプレックスにつながることもあります。
咀嚼、姿勢の習慣
片側ばかりで噛む片噛みや、食事の際に早食いをする習慣も、噛み合わせの偏りを生み出します。片方の筋肉だけが発達すると、顎の位置が徐々にずれていき、噛み合わせの高さが左右で異なるようになります。この状態が続くと、上下の歯が均等に当たらず、前歯が開いてくる原因となります。
また、姿勢の悪さも見逃せません。猫背やスマートフォンを長時間見る姿勢では、頭が前方に出て下顎が引かれた状態になり、筋肉のバランスが乱れます。その結果、噛む力の方向が変わり、開咬が悪化することがあります。
日常生活では、正しい姿勢と左右均等な咀嚼を意識することが予防、改善の第一歩です。
開咬を放置するデメリット

噛む力のバランスが崩れる
前歯が噛み合わないため、奥歯ばかりで噛む癖がつきます。奥歯に過剰な力が集中すると、歯のすり減りや歯根のダメージ、詰め物や被せ物の破損が起きやすくなります。
また、奥歯だけで咀嚼することで顎の動きが偏り、筋肉の緊張や左右のバランスの乱れが生じることもあります。結果として、顎の関節に負担がかかりやすくなり、顎関節症を発症するリスクが高まります。
発音や会話に影響する
開咬では、歯と歯の間に隙間があるため、空気が漏れやすくなり、特に「サ行」や「タ行」などの発音が不明瞭になります。このような発音の癖は、矯正後も残りやすいため、早い段階で舌の使い方や発音のトレーニングを行うことが大切です。
口腔乾燥
開咬により口が閉じにくくなると、自然と口呼吸の時間が増えます。口呼吸は唾液の分泌を減少させ、口の中が乾燥しやすくなります。
唾液には自浄作用があるため、乾燥によって虫歯や歯周病、口臭が起こりやすくなります。
さらに、乾燥した歯肉は炎症を起こしやすく、歯肉の腫れや出血などの症状を招くこともあります。
治療が難しくなる可能性
開咬を長期間放置すると、歯や骨がその状態に順応して固定化されてしまいます。結果として、矯正治療にかかる期間が長くなったり、歯だけでの調整が難しくなり、外科的な処置が必要になる場合もあります。
また、成長期を過ぎてからの骨格性開咬では、顎の位置や筋肉の使い方も修正しなければならず、治療の難易度が上がります。
開咬を治すメリット
食事がしやすくなる
開咬では前歯で食べ物を噛み切れないため、麺類や野菜などをうまく食べられないことがあります。矯正で前歯が正しく噛み合うようになると、食べ物をしっかり噛み切ることができ、食事が快適になります。
発音が明瞭になる
開咬の方は、空気がもれやすく「サ行」や「タ行」などの発音が不明瞭になることがあります。歯の隙間が改善されることで、発音がはっきりし、会話もしやすくなります。
顔立ち、口元の印象が整う
前歯が噛み合わないと、口が閉じにくく、常に口が開いた状態になりやすい傾向があります。治療によって自然に口が閉じられるようになり、横顔のライン(Eライン)も整いやすくなります。
顎関節への負担が減る
奥歯ばかりで噛んでいる状態が続くと、顎関節や筋肉に偏った負担がかかります。全体でバランスよく噛めるようになると、顎関節症や筋肉のコリのリスクを減らせます。
虫歯や歯周病のリスクが減る
開咬では歯並びの不均衡から清掃が行き届きにくく、プラーク(歯垢)が溜まりやすい箇所ができます。矯正治療で歯並びを整えることで、ブラッシングがしやすくなり、虫歯、歯周病の予防につながります。
マウスピース矯正で開咬は治せる?

軽度〜中等度の開咬に有効
マウスピース矯正(インビザラインなど)は、歯の位置や傾きをデジタル制御し、歯を少しずつ正しい位置へ動かしていく治療法です。特に、歯の傾きや舌の癖が原因で起きている軽度〜中等度の開咬に効果が期待できます。
奥歯をわずかに沈めることで、前歯が自然に閉じるよう誘導し、口全体のバランスを整えます。
マウスピースならではの強み
ワイヤー矯正では難しい、奥歯を沈み込ませる動き(圧下)も、マウスピースは歯の全体を包み込む構造のため、垂直方向の力を加えやすいという特長があります。
この垂直的なコントロールによって、開咬特有の前歯の隙間を閉じる動きが可能になっています。
▶ マウスピース矯正での歯の動かし方については、「痛みが少ない理由がわかる! インビザラインの歯の動かし方」をご覧ください。

マウスピース矯正の治療の流れ
ここでは、一般的なマウスピース矯正の治療の流れを説明していきます。
カウンセリングと診断
まずは、口腔内スキャンやレントゲンを撮影して、歯の位置、舌の動き、骨格のバランスを確認します。開咬の原因が舌の癖か、骨格性かによって治療計画が大きく変わるため、初期診断が非常に重要です。
3Dシミュレーション
シミュレーションソフトで歯の動きを段階的にシミュレーションします。治療前に、どのように前歯が閉じていくのか、最終的な噛み合わせがどう変わるのかを確認できるため、安心して治療を進められます。
マウスピースの作製と装着
患者様ごとの歯型データをもとに、数十枚のマウスピースを作製し、1週間〜2週間ごとに新しいものに交換しながら、少しずつ歯を動かしていきます。
1日20時間〜22時間の装着が基本で、外している時間が長いと治療効果が下がるため注意が必要です。
定期チェックと調整
1ヵ月〜2ヵ月ごとに通院し、歯の動きや噛み合わせの変化を確認します。治療途中で舌の使い方や呼吸習慣の改善指導を行うこともあります。
保定
計画通りに歯の移動が完了したあとは、リテーナーで歯の位置を安定させます。
開咬は後戻りしやすいため、舌癖や口呼吸などの生活習慣を見直しながら保定を継続することが重要です。
▶ 保定期間については、「インビザラインの治療期間・保定期間について」をご覧ください。

治療期間と費用の目安

治療期間の目安
マウスピース矯正による開咬治療は、軽度で1年〜1年半、中等度で2年程度が一般的です。歯列全体のバランスを整える必要がある場合はもう少し長くかかることもあります。
費用の目安
マウスピース矯正の費用は、治療範囲や装置の種類によって異なります。
・部分的な開咬(前歯のみ)……約30万〜60万円
・全体的な開咬矯正………………約70万〜120万円
・ボトックス併用時……追加10万〜30万円程度
※顎変形症と診断され外科手術を伴う場合や、特定の先天性疾患がある場合の矯正治療は保険診療の範囲で行えることがあります。
▶ マウスピース矯正についての詳細は、「マウスピース矯正のメリット・デメリットを徹底解説!治療の向き・不向きチェックリスト」をご覧ください。

マウスピースと開咬についてよくある質問

- 開咬は自然に治りますか?
-
基本的に自然治癒は期待できません。舌癖や口呼吸、骨格バランスなど複数要因が絡むため、放置すると悪化や固定化のリスクがあります。まずは原因を特定し、必要に応じて矯正治療や口腔筋機能療法で対処するのが有効です。
- マウスピース矯正で全ての開咬が治せますか?
-
軽度〜中等度の歯列性開咬には有効ですが、骨格性が強い、重度の場合は外科的矯正との併用が必要になることがあります。診断で歯列性か骨格性かを見極め、最適な組み合わせを提案します。
- 治療期間はどれくらい?忙しくても続けられますか?
-
目安は軽度で1年〜1年半、中等度で約2年程度です。1ヵ月〜2ヵ月ごとの来院で済むケースが多く、装着管理を徹底すれば仕事や育児と両立しやすい治療法です。装着時間を守ることが期間短縮のカギです。
- 費用はどのくらいかかりますか?保険は使えますか?
-
部分的な前歯中心の開咬で30万円〜60万円、全体矯正で70万円〜120万円が一般的な目安です。ボトックス等を併用する場合は+10万円〜30万円程度です。
- 後戻りを防ぐには?生活で気をつけることは?
-
リテーナーの着用を指示通り続けることが重要です。あわせて癖の改善を意識しましょう。指しゃぶりやうつ伏せ寝、唇を噛む癖は再発リスクになるため避けてください。
まとめ:原因を見極めて正しい方法で改善を
開咬は、歯の位置だけでなく、舌の癖や骨格など複数の要因が関係して起こる複雑な不正咬合です。
マウスピース矯正は、軽度〜中等度の開咬に対して有効であり、目立たず快適に治療を進められる選択肢として注目されています。
ただし、骨格性の開咬や重度のケースでは、他の治療法と併用する必要があります。
まずは歯科医院で精密検査を受け、自分の開咬がどのタイプにあたるのかを確認しましょう。
当院は無料カウンセリングを実施していますので、お気軽にお問い合わせください。
また、当院は5年連続でインビザライン・レッドダイヤモンドを受賞しており、症例数・技術ともに豊富です。
正しい知識と実績ある医師のサポートで、安心して矯正治療を始めていただけます。



